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最高裁判所第二小法廷 昭和39年(あ)65号 判決 1964年6月05日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人重松蕃、同樋口幸子の上告趣意について。

所論は要するに、原判決は、刑訴一六〇条の制裁は秩序罰たる過料を規定したものであり、同一六一条の制裁は刑罰たる罰金、拘留を規定したものであって、両者は併科できる関係にあり、かく解することは憲法三九条に違反しないと判示するが、同一の手続上の義務の保障に関し刑訴が二個の条文を設けたのは、義務の本質的相違によるものではなく義務違反の程度の差違によるもので両者は二者択一の関係におかれているものであると解すべきであるから、原判決は法律の解釈適用を誤ったものであり、仮りに原判示のごとく両者が併科できると解すべきものとすれば、右規定は憲法三一条、同三九条後段に違反するというのである。

しかしながら、刑訴一六〇条は訴訟手続上の秩序を維持するために秩序違反行為に対して当該手続を主宰する裁判所または裁判官により直接に科せられる秩序罰としての過料を規定したものであり、同一六一条は刑事司法に協力しない行為に対して通常の刑事訴訟手続により科せられる刑罰としての罰金、拘留を規定したものであって、両者は目的、要件及び実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではなく併科を妨げないと解すべきであり、右規定が憲法三一条、同三九条後段に違反しないことは、当裁判所の判例(昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決、刑集四巻九号一八〇五頁、昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日大法廷判決、民集一二巻六号九三八頁、昭和二八年(あ)第一四四七号同二九年七月二日第二小法廷判決、刑集八巻七号一〇〇九頁、昭和三三年(あ)第二二五八号同三四年四月九日第一小法廷判決、刑集一三巻四号四四二頁)の趣旨に徴し明らかであるから所論は理由がない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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